アメリカカンザイシロアリは危険な外来種！生態やフンの特徴をまるっと解説

「アメリカカンザイシロアリってどんなシロアリなの？」
と疑問に感じていますね？

アメリカカンザイシロアリは、近年日本で被害が広がっている外来種のシロアリです。

家の木材を食害するシロアリのなかでも、アメリカカンザイシロアリは厄介な種類としておそれられています。

この記事ではアメリカカンザイシロアリの特徴、危険な理由、予防方法まで解説します。

この記事を読めばアメリカカンザイシロアリへの適切な対策がよくわかり、大切な家を守って安心な生活を送れるでしょう。

外来種アメリカカンザイシロアリの生態

アメリカ原産の外来種であるアメリカカンザイシロアリの生態は、日本のシロアリとは違いがあります。

最初に、アメリカカンザイシロアリの生態的な特徴をご紹介します。

外見は赤っぽい色が特徴

アメリカカンザイシロアリの見た目は、やや赤っぽい色が入っているのが特徴です。

シロアリには外敵から巣（コロニー）を守る兵蟻（へいぎ）、エサ集めや卵の世話などをする職蟻（しょくぎ）といった階級があり、階級によって見た目に違いがあります。

なかでも、私たちが見かける機会のある3種の外見的特徴をご紹介します。

アメリカカンザイシロアリ以外のシロアリの見た目は、以下の記事でご紹介しています。
ぜひ比較してみてください。

日本での生息地は関東以西の都市部

日本でアメリカカンザイシロアリの生息が確認されているのは、関東よりも西の地域です。
生息地域はまだそれほど広くはなく、都市部を中心に点々と散らばっています。

参考：公益社団法人 日本しろあり対策協会｜わが国で建築物を加害するシロアリの種類と分布を教えてください（最終閲覧日：2024年4月4日）

北海道などの寒冷地では、まだ生息が確認されていません。
シロアリは暖かい環境を好むためと考えられます。

ただし、今後生息地が拡大して寒冷地にもアメリカカンザイシロアリが発生する可能性はあります。

近年の住宅は断熱性能が優れていて、寒冷地でも家の中は暖かいからです。

実際に原産国であるアメリカでは、平均気温が0度になるような地域にもアメリカカンザイシロアリが分布しています。

侵入経路は輸入木材

アメリカカンザイシロアリが日本の住宅に侵入する経路は、おもに以下のような海外から輸入した木材です。

• 輸入した木製の家具や楽器
• 海外産の住宅木材
• 輸入製品の梱包材

アメリカカンザイシロアリが住み着いている木材を家の中に持ち込むことで、家にアメリカカンザイシロアリが侵入してしまうのです。

日本で家具や建築材料の輸入が盛んになるとともに、アメリカカンザイシロアリの侵入も増加してきたと考えられます。

近隣にアメリカカンザイシロアリの巣がある場合、羽アリが飛んできて家に侵入することもあります。

被害箇所は家中の木材

アメリカカンザイシロアリの被害で特徴的なのは、家の広い範囲の木材が被害に遭うことです。

日本の在来種であるヤマトシロアリと比較すると、以下のような違いがあります。

アメリカカンザイシロアリ

生息環境

• おもに木材の中（非土壌性）
• 乾いた環境でも活動

おもな発生箇所

• 屋根裏
• 壁の中
• タンスなど木製家具
• ピアノなど木製楽器

ヤマトシロアリ

生息環境

• おもに地中（土壌性）
• 湿った環境を好む

おもな発生箇所

• 床下
• 水回り

アメリカカンザイシロアリは乾燥に強いので、日本のシロアリよりも活動範囲が広く、被害も広範囲になるのです。

羽アリは7月～10月頃に発生

アメリカカンザイシロアリの羽アリは、7月～10月頃に発生します。

シロアリの羽アリは群飛（ぐんぴ）といって、ある時期になると一斉に飛び立ちます。

群飛の時期は種類によって、以下のように違いがあります。

種類	時期	時間帯
アメリカカンザイシロアリ	7月～10月頃	昼間
ヤマトシロアリ	4月～5月頃	昼間
イエシロアリ	6月～7月頃	夕方～夜

※羽アリの発生時期や時間帯は、地域や気候によって変動します。

秋口に羽アリを見かけたなら、それはアメリカカンザイシロアリかもしれません。

繁殖スピードは比較的遅い

アメリカカンザイシロアリの繁殖スピードは、在来シロアリに比べて遅いです。
個体数が増加するスピードが、1年で数匹～数十匹と緩やかだからです。

アメリカカンザイシロアリは、巣の規模も小さい傾向です。

1つの巣（コロニー）の個体数

アメリカカンザイシロアリ

数百匹程度

ヤマトシロアリ

数万匹程度

イエシロアリ

100万匹程度

原産国のアメリカでは、巣の個体数が千匹以上になることもあります。
一方、日本の住宅のように小さな木材の中では、最大でも数百匹程度までしか増えません。

このように繁殖力はそこまで強くないのに、アメリカカンザイシロアリが危険な外来種とされている理由を、次の章で解説します。

アメリカカンザイシロアリがおそれられる理由

アメリカカンザイシロアリがおそれられている理由は、日本で一般的なシロアリの予防や駆除の方法が通用しないことが多いからです。

具体的には、以下のようなことが挙げられます。

それぞれ詳しく解説していきます。

薬剤散布での予防が難しい

一般的な住宅に施されている薬剤散布によるシロアリ予防では、アメリカカンザイシロアリの侵入を防げません。

薬剤が散布されているのは、基本的に床下だけです。
地中に住む在来シロアリは床下を通って家に侵入するので、床下だけを対策すれば十分です。

しかし、アメリカカンザイシロアリには床下だけの対策では意味がありません。

アメリカカンザイシロアリは木材の持ち込みや羽アリの飛来によって、家のどこからでも侵入する可能性があるからです。

かといって、家の壁や天井にまで散布するのは現実的ではありません。

日本で広く使われているシロアリ予防の薬剤を人の生活空間に使うのは、人体や建物への安全性に懸念があるからです。

早期発見が難しい

在来シロアリに比べて、アメリカカンザイシロアリは被害に気付きにくい特徴があります。

アメリカカンザイシロアリは繁殖スピードが遅く、巣の規模も小さいため、目立った被害があらわれるまでに時間がかかります。

気付いたときには、家の中に小さな巣があちこちにできているということがありえるのです。

生息場所の特定が難しい

すでにアメリカカンザイシロアリが家の中に住み着いている場合、巣の場所を特定するのも困難です。

シロアリの巣の場所を特定する手がかりになる蟻道（ぎどう）を、アメリカカンザイシロアリは作らないからです。

蟻道は、シロアリが日光や乾燥を避けて移動するために作る土のトンネルです。

蟻道を見つけることで、その近くに巣があることがわかります。

しかし、乾燥に強いアメリカカンザイシロアリは蟻道を必要とせず、木材の内部を直接食害しながら移動します。

そのため、家の中のアメリカカンザイシロアリの巣をすべて発見して駆除するのは、非常に困難なのです。

ベイト工法での駆除ができない

日本ではシロアリの駆除方法として使われるベイト工法（毒エサを食べさせて駆除する方法）も、アメリカカンザイシロアリには効果がありません。

ベイト工法では、毒エサを容器に入れて地面に埋めてシロアリをおびき寄せます。

しかし、アメリカカンザイシロアリは地中には生息していないので、ほぼ引っかかることはないのです。

アメリカカンザイシロアリの発生サイン4つ

家にアメリカカンザイシロアリが発生しているときの特徴的な症状を4つ解説します。

これら症状が見られた場合には、すでにアメリカカンザイシロアリの被害が広がっているおそれがあります。

サインを見逃さないよう、家の中をチェックしてみましょう。

柱の周りに粒状のフンが落ちている

アメリカカンザイシロアリは、特徴的な形のフンを排せつします。

アメリカカンザイシロアリのフン

提供：株式会社ミナト

積もるほどフンが落ちている場合、木材の食害がかなり進んでいると考えられます。
早急にシロアリ駆除業者に相談しましょう。

巣の場所の特定に役立つ場合があるので、フンは片付けずにそのまま置いておくのがおすすめです。

柱や壁に小さな穴がある

アメリカカンザイシロアリが住み着いている柱などの木材には、3mmほどの小さな穴が開いていることがあります。

木材の中に住み着いたアメリカカンザイシロアリは木材の表面に蹴り出し穴と呼ばれる穴を開け、そこからフンを捨てるのです。

床などにフンらしきものが落ちていたら、周囲の木材に下の写真のような穴がないかチェックしてみましょう。

アメリカカンザイシロアリの蹴り出し穴

提供：株式会社ミナト

木くずや蹴り出し穴も、アメリカカンザイシロアリの被害が進んでいるサインです。
発見したら早めにシロアリ駆除業者に相談しましょう。

黒っぽい羽が落ちている

黒く小さな羽の残骸がたくさん落ちている場合は、アメリカカンザイシロアリの羽アリが侵入しているおそれがあります。

巣立ったシロアリの羽アリは地上に降りると、すぐに羽を落とす性質があります。

同じ箇所にたくさんの羽が落ちているということは、そこにたくさんの羽アリが飛来したということです。

羽を落とした羽アリはその後、相手を見つけて交尾し、巣作りを始めます。
つまり、これから巣を作られるおそれがあるのです。

また、すでに近くに巣があるおそれもあります。
アメリカカンザイシロアリの羽アリは飛行距離が短いので、ごく近くの巣から出てきた羽アリである可能性があります。

羽アリの飛行距離

アメリカカンザイシロアリ

2～3m程度

ヤマトシロアリ

～100m程度

イエシロアリ

～数百m

アメリカカンザイシロアリの羽アリの羽は、黒っぽくて透けている見た目が特徴です。

木材をたたくと空洞音がする

柱などの木材を手でたたいてみたときに、ポコポコと軽い音が聞こえたら、木材の内部が食害されているおそれがあります。

シロアリは木材の表面は残して、内部だけを食害していきます。
そのため、いつの間にか中身がボロボロになっていることがあるのです。

シロアリの被害は、放っておくと家全体のゆがみにもつながります。
一刻も早く駆除が必要です。

※対応エリア・加盟店・現場状況により、事前にお客様の了承をいただいたうえで、調査費用等をいただく場合がございます。

原産国アメリカの駆除方法は日本では難しい

原産国であるアメリカで確立されているアメリカカンザイシロアリの駆除方法が、日本では使えない現状があります。

アメリカでもちいられるアメリカカンザイシロアリの駆除方法は、おもに以下の2つです。

それぞれどのような方法なのか、なぜ日本でも同じことができないのかを解説します。

天幕燻蒸処理

天幕燻蒸処理（てんまくくんじょうしょり）は、建物をビニールシートで覆って、その中に殺虫効果のあるガスを充満させる方法です。

建物のすみずみまでガスを充満させることで、家中のアメリカカンザイシロアリを一気に駆除できます。

天幕燻蒸処理が日本であまり採用されないのは、以下のような事情があるからです。

熱風処理

熱風処理は、建物をシートで覆って熱風を送り込み、数時間高温状態を保つことでシロアリを駆除する方法です。

熱風処理も、日本ではあまり導入されていません。
天幕燻蒸処理と同様に危険がともない、近隣への影響が大きいためです。

日本でのアメリカカンザイシロアリ駆除方法

まだまだ確立されていないものの、日本でも使われているアメリカカンザイシロアリに有効な駆除方法が2つあります。

どのような方法なのかそれぞれ解説します。

穿孔注入処理

穿孔注入処理（せんこうちゅうにゅうしょり）は、シロアリが住み着いている木材に穴を開け、内部に駆除薬剤を注入する方法です。

注入する薬剤は、公益社団法人しろあり対策協会が安全性や有効性を認めた乾材シロアリ用駆除剤が使われます。

業者によってはムース上の薬剤や、ホウ酸を使用する場合もあります。

穿孔注入処理は被害箇所を的確に見つけて施工する必要があるので、プロの技術と経験がとても重要です。

以下の記事では、実際のシロアリ駆除業者の施工内容を解説しています。

ホウ酸塩処理

ホウ酸塩処理は、ホウ酸塩の水溶液を木材に散布、注入してシロアリを駆除、予防する方法です。

シロアリはホウ酸塩処理した木材を一定量以上食べると、死んでしまいます。
体内にホウ酸がたまると、栄養をエネルギーに変える代謝ができなくなるからです。

シロアリはホウ酸を分解、排出する腎臓がないので、食べたホウ酸は体内にたまっていきます。
その結果、エネルギーがなくなって死に至るのです。

ホウ酸を使ったシロアリ駆除には、以下のようなメリット、デメリットがあります。

特に、安全性が高い点は、アメリカカンザイシロアリの駆除や予防にとって大きなメリットです。

アメリカカンザイシロアリの侵入経路になる、屋根や壁などにも安全に施工ができるからです。

また、ホウ酸の効果をもっとも引き出せるのは住宅の建築時です。
壁の中などの木材にあらかじめホウ酸を染み込ませることで、長期的にシロアリ予防ができます。

シロアリに対するホウ酸の効果は、以下の記事でも解説しています。

アメリカカンザイシロアリの駆除費用には相場がない

在来シロアリの駆除費用は一般的な相場がありますが、アメリカカンザイシロアリの駆除費用は相場がはっきりしていません。

日本ではアメリカカンザイシロアリの駆除件数が少なく、十分なデータがないからです。

アメリカカンザイシロアリの駆除に対応している業者自体も、まだまだ多くありません。

対応可能な業者でも、アメリカカンザイシロアリに関しては料金表にも「要見積り」などと表示されていることが多いです。

そのため、アメリカカンザイシロアリの駆除費用は状況や業者によって大きく変動する可能性があります。

業者にアメリカカンザイシロアリの駆除を依頼するときには、複数の業者から見積りを取って比較し、妥当な料金を見極めることが重要です。

以下の記事では、シロアリ駆除の費用相場や安く抑えるコツを解説しています。

シロアリ保険・保証の対象外になることも多い

シロアリ駆除業者の施工保証では、アメリカカンザイシロアリは対象外になっていることが多いです。

アメリカカンザイシロアリは在来シロアリとは、さまざまな点で性質が異なるからです。

業者が通常のシロアリ駆除や予防の施工をどれだけしっかりしていても、アメリカカンザイシロアリも防げるとは保証できないのです。

シロアリ駆除の保証の内容や対象外になるケースは、以下の記事でも解説しています。

高い駆除費用を払うことにならないために、アメリカカンザイシロアリの予防もしておきましょう。

次章で予防方法を解説します。

アメリカカンザイシロアリの予防方法

アメリカカンザイシロアリの被害を防ぐには、以下の2つの予防方法が有効です。

それぞれ詳しく解説します。

輸入製品は防蟻処理のチェックをする

輸入製品を購入したときには、防蟻処理の有無をチェックしましょう。

アメリカカンザイシロアリが家に侵入する原因は、海外から持ち込んだ木材が多いからです。

特に個人で輸入した場合は、事前のチェックがされていない可能性もあるので、入念にチェックしましょう。

以下のような点も、アメリカカンザイシロアリの被害を見つけるチェックポイントです。

• 小さな穴があいていないか
• 木くずやフンが付着していないか

もしもアメリカカンザイシロアリの痕跡を見つけたときは、一度シロアリ駆除業者に相談することをおすすめします。

プロに定期点検を依頼する

自分でチェックするのも手軽ですが、シロアリ駆除業者に点検してもらうのがより安心です。

被害を最小限に防ぐには、早期発見が重要です。

しかし、アメリカカンザイシロアリは被害のサインを見つけにくいので、プロの目線で入念に点検をしなければ早期発見は難しいでしょう。

少しでも早く被害に気付けるよう、こまめに点検を依頼するのがおすすめです。

定期点検を実施しているシロアリ駆除業者もあるので、ぜひ活用しましょう。

※対応エリア・加盟店・現場状況により、事前にお客様の了承をいただいたうえで、調査費用等をいただく場合がございます。

アメリカカンザイシロアリ以外の乾材イシロアリ

木材の中に住み着く乾材シロアリは、アメリカカンザイシロアリ以外にもいます。

日本では、以下のような種類が確認されています。

交通網や情報技術の発達によって海外と人や物のやり取りが活発になり、今後外来種の侵入が増加することも十分に考えられます。

乾材シロアリへの対策がより一層必要になってくるでしょう。

まとめ

アメリカカンザイシロアリは生息環境が在来種と違い、駆除や予防が難しい厄介な外来種です。

家で以下のようなサインが見られたときは、アメリカカンザイシロアリを疑いましょう。

プロによる点検もこまめにしてもらい、被害を最小限にとどめましょう。

シロアリ駆除業者をお探しの際には、ぜひ当サイト【シロアリ110番】にご相談ください。